柳家小三治
博多独演会 1989.3.17
「がまの油」枕

落語の枕 = 本題に入る前のイントロ

陛下の思い出

でも世間中、自粛してましたよ。長い長い自粛でしたよ。困る国民も多勢おりました。 でも自粛してるってことを天皇陛下はご存知ない。 「国民が自粛している? ン、うれしい」 なんて言わないですよ。あの方は、きっとね。(笑)。 そういうことを聞いたらね、いい顔しなかったと思いますね。 考えてみると、天皇陛下の一生っていうのはいつもそうだったような気がしますね。 あの方の陰で自分のわがままを押し通そうとしたり、いい子になろうとする人たちが いっぱいいたんですね。かわいそうですね。考えてみると。  時の流れとはいいながら、あの方自身はとてもおかわいそうだったような気がします ね。戦争したくなかったんでしょ? ほんとは。でも戦争責任があるっていわれてます。 それは、あるってことになればあるんだろうと思います。ないってことになれば、そう、 ないってすぐそっちのほうに賛成します。 どうもあたしはわからないですねえ。納得いかないですね。いつも陰に誰かがいるっ てことがね。 ま、そういう難しい話はね、やるってぇと、またここでもって血の雨が降るようなこと になりますから(笑)。あたし、血の雨はあんまり降らせたくないですからね。

長い枕の中の一部の引用です。


 講談社文庫