予兆の街 作:堀 剛 地図からその名を消された街 釜ケ崎 ここから日本が見える アジアだって見えるかも知れない そんな言葉を確かめてみたくて 僕は釜ケ崎を歩く 働けば搾取され 病めば病院行き商品となり 野垂れ死ねば医学生の教材にされていく人々の街 貧しさすら、すっぽりとテレビカメラで監視されている街 僕らの国家の構造はこの街である 僕らの行政こそ殺人的だ 確かな予兆が僕らに伝わり始めると もう すっかり足音が接近している この街の機動隊の風景が 僕らの日本の風景に重なり始めている どんなナマチョロケの思想だっていい あるいは どんな硬直した視線でもいい この街を歩いてみれば もう すっかり覗き込んでいる 国家にとって 僕らが誰で ここが何処で 僕らは何処へ行くのか 危機の予兆だけで 僕らはもう すっかり 世界を覗き始めている


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