我日本は言語上の私刑國
△馘首 くびきりにて著名なるは、台湾の生蕃なれども此くびきりの蛮習は
我國にても盛んに行はれし私刑公刑なり、首を取るとか、首実検とか、首をサラ
スとか、首の無い人とか云う言葉は、我戦國以後、比喩的俗語に転化するほど、
首切りは普通常事視せられしことなり
文化輸入の近世に至りてマダ現實に首無し男女の屍體とか、「天印」とか云へる
事も行はれ、又言語としては罷免解職の事を「首を落さる」「首を切らる」「首
が飛んだ」などの代名詞にて通し、世界思潮の激波にて起れる資本家と労働者と
の闘争記事中にも、新聞記者は「馘首」といへる蛮習語を平気にて盛んに使用す
るなど領䑓以後の我國は、世界第一のくびきり國なるべし
尚此外に「詰腹を切らせる」といふ俗諺あり、自殺を強要せし私刑的残虐事の
転化語なり
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