手塚治虫
火の鳥 「鳳凰編」


我王(主人公)と良弁の会話

じゃ坊さまや寺はなんのためにあるのです? 国分寺が全国にたち りっぱな大仏がつくられる⋯ みんな政治のためだ お上が庶民に重い税金を払わせ だまって従わせるために⋯ 仏教をひろめてごまかしとるんじゃよ どうだ がっかりしたか? 宗教なんてそういうもんだ

115p



良弁と蛾王の会話

生きものはな どんなちっぽけなものでも 生をうけたからには なにか生きる役目をもっているはずじゃ また説教をはじめやがった! おまえはくだらん人間だ 人間のクズかもしれん だがいまわしはしったぞ おまえはその像をつくるために うまれてきたのだ!

129p


即身仏となった良弁のミイラを前にした蛾王の独白

中魚禽獣死ねば⋯どれもみんなおなじ! 人が仏になるなら⋯生きとし生けるものはみんな仏だ!

257p


上につづいて蛾王の独白

生きる? 死ぬ? それがなんだというんだ 宇宙のなかに人生など いっさい無だ! ちっぽけなごみなのだ! 

259p


手塚治虫の解説

あおによし 奈良の都は咲く花の におうがごとく いまさかりなり 平城京を舞台として発展した奈良朝の文化は かなり仏教的な色あいがこいものであった 天皇をはじめ 貴族 豪族 学者 しかも神社までが 仏教文化に協力した そのよい例が東大寺の大仏である しかしそのかげにはいつも くるしみながら どれいのように働かされている民衆がいた ことを忘れてはならない 

291〜2p




 月刊マンガ少年別冊 朝日ソノラマ