読書した中で,心ひかれた文章を紹介しております。

上野千鶴子「 スカートの下の劇場」



 河出文庫

1992年11月 4日 初版発行
2010年 4月30日 第17刷発行



2.下着と性器管理 「ブリーフとトランクス」より

男がパンツを選ぶときの条件は二つあります。一つは母親のあてがいぶち、もう一つは 結婚のときの妻の押しつけです。下着を男が自分で買うという習慣がなかったものですか ら、女たちのあてがいぶちに男たちは従ってきました。私の知っているケースでも、結婚 を機会に、トランクスを強制的にブリーフに替えさせられたという男がいます。それが十    何年かたって、もういっぺん妻の支配から離脱して、トランクス返りをする。また子供時    代の母親のあてがいぶちから離脱して、自分でトランクスを選ぶという初体験をする男の    子もいます。 そうすると、とりあえず男の下着のオプションはプリーフとトランクスの二つしかなく    て、女性支配と女性支配からの離脱という両極のあいだを動いていることになります。女    性支配の側はいつもブリーフの側にあります。これは用意に理解できます。ブリーフは確    かに包み込む働きをします。一般に女性は男性がトランクスの中で性器をブラブラさせて    いるというイメージを嫌いますから、包んで隠してサポートしてという方向に向かいます。





「あとがき」より

パンティと天皇制。両者には奇妙な符号がある。どちらもワイセツなものにフタをして かくす働きをする。逆に言えば、そこにあれば何でもない「裸の王様」にタブーというフ タをすることで、かくれたものの価値を高めようとする。