サイコロ賭博 三角公園で労働者相手に暴力団が開くサイコロ賭博は、釜ヶ崎名物(?)の一つ。 1987年の夏祭りの日、私はしかと見た。 三角形の公園の二辺に例年通り私服刑事が多数張り付いて、祭りを楽しんでいる労働者を 監視していた。 もう一辺では暴力団がいつも通りに賭場を開いていた。 刑事たちと賭場の距離は10メートルほど。暴力団員が威勢良く声をかけていた。 「張った張った!」「もうないかないか!」「勝負!」 急にシーンとなった。皆が振り返った。トランシーバーのイヤホーンを耳にした三人の 私服刑事がしらんふりして通り過ぎた。その後ろ姿に向かって暴力団の一人が声をかけた。 「ごくろうさんです」。 覚醒剤 釜ヶ崎で覚醒剤がどこの路上で売買されているかは、釜ヶ崎では知らない人はいないという。 そのうちの一カ所は西成署の前だというではないか。西成署員は知らんぷりだそうだ。 (1987年8月に聞いた話) テント 三角公園の西側に沿った道を少し北へ行くと道の両側に常設の屋台小屋が並んでいる。 安く飲み食いできる屋台は労働者にとって貴重である。車の往来があまりないことも あって西成警察は大目に見ているのだろう。 、、、と思ったらとんでもない。 屋台小屋は暴力団が取り仕切っているので、西成警察は手を出さないのだと。 手配師 釜ヶ崎の公共職業安定所は職業斡旋はしない。 暴力団の手配師 (1)が代行しているである。 日雇い労働者は手配師に連れられマイクロバスで人夫出し業者 (2) の事務所へ行って、そこから工事現場に派遣される。 2〜3万人の労働者からピンハネしている暴力団はぼろい儲けである。 この狭い釜ヶ崎に暴力団事務所が20数カ所もあるという。 1990年の騒動の原因となった暴力団から西成署の刑事への賄額 は明らかになっただけでも一千万円。一人の刑事 (3)へである。 日雇い労働者から搾取した巨額な金の一部が西成署の刑事の懐に入ったのである。 (1) 人集めのため、作業現場、賃金、労働条件をよくごまかすという。 (2) 別名ピンハネ業者。 (3) 暴力団との癒着は「自分だけではない」と白状したのに他に逮捕者がいない。 参考文献:「釜ヶ崎歴史と現在」労働と生活(著者:小柳伸顕氏)